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賃上げ促進税制・繰越控除が可能になる

 「賃上げ促進税制」とは、従業員に対する給与の支給額を一定割合増加させた場合に、賃上げ額の一部を法人税から控除できる制度です。
計算した税金の額から各種規定のルールで計算した「控除額」を引いて、税金そのものの額を減らすことを税額控除といいます。例えば、法人税の額が100万円で、控除額が30万円の場合、納税する金額は70万円となります。要件を満たして「税額控除」の適用を受けると、納税額の負担が減ります。計算した税額から直接引けるので、効果が大きいです。(混同しがちなもので、「所得控除」というものがありますが、こちらは税金から直接ひかず、所得計算の段階で引くものです。控除する段階が違います。)
 ですので、赤字だったりで、納める税金がなかったら、賃上げ税制の対象になる従業員の給料を上げる等、適用を受けるための条件を満たしても税額控除の恩恵はありません。現状では、中堅企業(※1)・中小企業者等(※2)に分類される企業は、大企業よりも赤字等の厳しい状況の企業の割合が多いのでせっかくの制度ですが利用しずらく、利用できないなら賃上げにも当然消極的。国は賃上げを行う中堅・中小企業を増やしたいので、賃上げを実施した年度以降に、業績がよくなったタイミングで税制の適用を受けられるように改正すれば、賃上げを行う中堅・中小企業が増えるだろうと考えて、R6年度の税制改正で繰越控除措置を創設しました。創設の趣旨が中堅・中小企業の賃上げを促すことなので、大企業は対象外です。令和6年4月1日以後開始の事業年度から適用されます。

繰越控除措置の概要

 令和6年度の税制改正では適用期間は令和6年4月1日から令和9年3月31日までに開始する各事業年度となっています。繰越できるのは5年間です。

 3月決算法人の場合、イメージは以下の通りです。R7.3月期の繰越控除額の流れだけを見てみます。
 実際に繰越控除する年度においては、雇用者給与等支給額(※3)が前年度から増加していることが要件とされます。
 ということは、税額控除の適用が受けられない事業年度も含め、全ての事業年度について、雇用者給与等支給額の集計と別表記載が必要になると考えられますので申告の際には留意が必要となります。

R7.3月期  赤字 法人税額   0円
         賃上額  150万円 税額控除額 45万円   控除できない45万円は翌年度以降に繰越

R8.3月期  赤字 法人税額   0円 
                   税額控除額 なし

R9.3月期  赤字 法人税額    0万円
                   税額控除額 なし 

R10.3月期  黒字 法人税額  150万円(控除限度額 30万円(法人税額×20%)
                   税額控除額  30万円 控除できない15万円は翌年度以降に繰越

R11.3月期  黒字 法人税額  60万円(控除限度額  12万円(法人税額×20%)
                   税額控除   12万円 控除できない3万円は翌年度に繰越

R12.3月期  黒字 法人税額  10万円(控除限度額  2万円(法人税額×20%)
                   税額控除額   2万円 控除できない1万円は切捨

用語

※1 中堅企業 R6年度の税制改正で新しく創設された区分です。資本金の額が1億円を超える法人のうち、常時使用従業者数2,000人以下のもの(その法人と支配関係にある法人グループの常時使用従業者数の合計数が1万人をこえるものをのぞきます。グループ全体で1万人を超えたら中堅対象外)


※2 中小企業者等 ①資本金又は出資金の額が1億円以下の法人(前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人を除く、同一の大規模法人から1/2以上の出資を受ける。または2以上の大規模法人から2/3以上の出資を受ける法人を除く)②資本又は出資を有しない法人で、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人(前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人を除く)③中小企業等協同組合や農業協同組合などの協同組合等


※3 雇用者給与等支給額 各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者(※4)に対する給与等の支給額をいいます。①パート、アルバイトに対する給与を含む②退職金は除き、決算賞与は含む


※4 国内雇用者 法人又は個人事業主の使用人のうち、その法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成さえた賃金台帳に記載された者をいいます。パート、アルバイト、日雇い労働者も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主と特殊の関係のある者は含みません。

NOTES

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