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カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

 少々前の2020年、政府から「2050年カーボンニュートラル」を目指すという宣言が出ました。時々企業や自治体、大学などが「〇△カーボンニュートラル宣言」などと謳っているのを見かけます。カーボンニュートラルとはどういったことかといいますと、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするというものです。全体としてゼロとは、二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスの「排出量」から森などの「吸収量」を差し引いた合計がゼロだ、ということで、それを2050年までに実現する、というのが2050年カーボンニュートラルの概要です。排出量の削減はイメージしやすいですが、吸収量は、植林をして空気中のCO2の吸収量を増やしたり、CO2を他の気体から分離して集めて地中深くのすき間の多い砂岩などの層の岩関の隙間に貯蔵した量などがカウントされます。(この貯蔵されたCo2は長い年月を経過すると地層水に溶けたり周辺の岩石と反応して鉱物化し、安定的に閉じ込められると考えられているそうです。)もともとある木や植物の吸収量をカウントするのでなく、行動を起こした結果減少した吸収量が対象となります。つまり削減のための行動と吸収のための行動が必要とされます。


 この宣言がなされた経緯ですが、2015年に温室効果ガス削減に関する国際的な取り決めについて話し合う会議があり、その会議で、産業革命以降の世界の気温上昇を1.5℃(会議の当時は2.0℃)に抑えましょう、という世界的な長期目標が掲げられ、それを大体2050年近辺までに達成しましょうということになりました。これが「パリ協定」と言われるもので、日本も批准したので「2050年カーボンニュートラル」の目標が掲げられることとなりました。
実現するためには革新的な技術開発とその技術を製品化につなげること、などが考えられており、そのための設備投資に対し、税制では、特別償却又は税額控除を受けることができます。2024年3月31日までに対象になる設備を取得して事業の用に供する必要があります。この制度は2024年3月31日までの期日をもって廃止となります。

適用対象法人

  • 青色申告書を提出する法人
  • 「エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画」の認定を受けている
  • 認定を受けるための計画に対象資産を導入することについて記載があること

対象資産

 認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画に記載された以下⑴⑵の資産で新品。取得価額の限度は合計500億円です。

⑴需要開拓商品生産設備→ 大きな脱炭素効果を持つ製品(燃料電池等)の生産設備

機械装置

⑵生産工程効率化等設備→ 生産工程を効率化することによる、脱炭素化と付加価値※向上を両立する設備

機械装置
器具備品
建物附属設備
構築物

※ここでいう付加価値とは営業利益+人件費+減価償却費で、設備投資によりエネルギー量が減り、光熱費が減少し、付加価値が増加する、ということをいっています。

適用対象事業

業種の限定はなし

特別償却

需要開拓商品生産設備・生産工程効率化等設備の取得価額×50%

(所有権移転外リース取引によって取得した設備は特別償却の適用なし)

税額控除

⑴需要開拓商品生産設備

需要開拓商品生産設備の取得価額×10%

⑵生産工程効率化等設備

生産工程効率化等設備の取得価額×5%
(付加価値額÷CO2排出量で算出される「炭素生産性」が10%以上向上する設備の場合は10%)

税額控除限度額

法人税額の20%(DX投資促進税制の適用がある場合は合わせて20%)

申告要件

特別償却、税額控除、それぞれ所定の別表に必要事項を記載

「財務省令で定める書類」の添付が必要

「財務省令で定める書類」

  • 生産工程効率化等設備等が記載された事業適応計画に係る認定申請書
  • 認定書
  • 確認書              

中小企業のカーボンニュートラル

 現在は大手が取り組んでいるような印象の強いカーボンニュートラルですが、どうも今後は企業単体からサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの達成に向かう流れのようです。サプライチェーン全体とは、大手に原材料を供給している中小企業や運送会社、リサイクル会社なども含む、供給網全体のことをいいます。この供給網に入っていたら本格的に対応を求められることもあるかもしれません。世の中の流れに注目しておきたいところです。

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